京都南法律事務所 法律相談Q&A

債務整理に関する方法としてはどのようなものがあるでしょうか
 
破産、個人再生、特定調停、任意整理
給料が激減したため、住宅ローンの他、銀行のカードローンや消費者金融からの借金を返すことができなくなりました。私は破産するほかないのでしょうか。
 借金を返済することが困難な場合には、直接債権者と交渉したり(「任意整理」と言っています)、裁判所の手続を利用して対応する方法があります(特定調停・個人再生・破産)。それぞれの手続に特徴がありますので(概要以下のとおり)、いずれの方法で対応するか、検討が必要です。以下、それぞれの手続きについて、説明します。
概要財産減免幅
破産自己破産を申立て、裁判所に債務全部について免責決定を出してもらう、但し、持っている財産は原則全て失い、浪費や詐欺的借入等免責が認められない場合がある(免責不許可事由)失う100%
個人再生小規模個人再生を申立て、裁判所に、持っている財産総額を下回らない範囲で、債務を減額してもらい(債務総額で減額幅が異なる)、それを原則3年間で分割弁済する再生計画を決めてもらう失わない
債務総額による、例えば、債務総額が500〜1500万円の場合80%
特定調停調停を申立て、裁判所のテーブルで債権者と話し合って、月々の返済額を減らしてもらったり、残債額を一部免除してもらう失わない
事案による、認められても大きくないことが多い
任意整理債権者と話し合って、月々の返済額を減らしてもらったり、残債額を一部免除してもらう失わない
事案による、認められても大きくないことが多い
※住宅ローン等の抵当権が付いている不動産やローンで買った自動車等については、後述のとおり。

破産
破産はどのような手続なのですか。
 破産とは、多額の借金などにより債務の支払いができなくなった場合に、破産管財人が破産者の全財産を換価しこれを公平に債権者に分配する手続きです。
 配当すべき財産がほとんどない場合には、破産宣告と同時に手続が終了する「同時廃止」という手続がとられます。
 破産手続の終了後に免責決定を得れば、残債務の支払いを免れ、ゼロからの再出発ができるのです。ただし、借金をギャンブルや遊興費に費消していた場合や、詐欺や財産隠しがあった場合など、免責不許可事由に該当する場合には免責を受けることができません。なお、税金や養育費・扶養義務などは、破産手続によっても免責されません。

破産すると、私の自宅はどうなるのでしょうか。
 破産手続は債務者の財産を換価することが原則ですので、自宅など債務者名義の財産を保有し続けることは困難です。住宅ローンの抵当権がついている自宅は競売され、ローンが残っている自家用車は債権者によって引き上げられることとなります。

破産者の戸籍・選挙権は?
 破産開始決定を受けても、戸籍や住民票には載りません、選挙権がなくなることもありません。ただし、一定の期間(免責が確定するまで等)一定の仕事に就くことは制限されます(警備員、一般建設業者等)。

破産者の給料・年金は?
 破産者は、破産開始決定後に得た財産、給料は自由に使えるのが原則です。破産開始決定が出ればそれまでにされていた差押は効力を失い、新たに差押することができなくなります。公的年金はそもそも差押禁止となっていますので大丈夫です。 

破産申立ての費用は?
 破産申立ての際には、裁判所に予納金を納める必要があります。京都地裁では、最低約20万円、同時廃止の場合で1万1859円とされています。他に切手、印紙など約1〜2万円を納付しなければなりません。また、申立書類作成及び債権者や裁判所との対応について弁護士を依頼する場合には、その費用も必要です。弁護士費用は、負債額、関係人の数などにより異なります。
 なお、収入や資産が日本司法支援センター(法テラス)の定める基準を下回る方については弁護士費用を立替える制度があります。1日も早く弁護士に相談されることをおすすめします。

 
個人再生
多額の借金があります。個人再生手続という手続をすれば借金が減ると聞いたのですが、どのような手続なのですか?
 個人再生手続は、簡単にいうと借金の一定部分を3年間(場合によっては5年間)で分割払いすれば、残りの部分を免除してもらえるという制度です。どれだけ支払をすればいいのかは、元々の借金(債務)の金額によります。(以下の表の通りですが、表の右欄の金額よりも、持っている財産をお金に換えた金額の方が多い場合には、その金額までしか減額されません。また、給与所得者再生手続(後述)には、例外があります。)
債権額減額
100万円未満減額されず
100万円以上500万円未満100万円まで減額
500万円以上1500万円未満5分の1に減額
1500万円以上3000万円未満300万円まで減額
3000万円以上5000万円未満10分の1に減額
5000万円超〜(個人再生手続が使えません)
 例えば、借金の金額が1000万円だとその20%ですから、200万円を3年間で分割払いすればいいのですが、300万円の価値のある自動車を持っている場合には、300万円の方が200万円よりも多いですから、300万円を3年間で分割払いすることになります。支払さえできれば、自動車を手放す必要はありません。

破産と何が違うのですか?
 破産は、債務を0にしてもらう代わりに、持っている財産を全てお金に換えて債権者に配当する手続です。例えば、土地や建物を持っている場合や高価な品物を持っている場合には、手放さなければなりません。一方、民事再生手続は、借金は0にはなりませんが、裁判所の決めた分割払いができれば財産を手放さなくてよいのです。
 また、破産手続については、事情によっては債務を0にすること(免責)が認められない場合があります。例えば、借りたお金をギャンブルにつぎ込んだり、詐欺的な借金をした場合等には(免責不許可事由)、免責が認められないことがあります。民事再生には、このような規定はありません。
(1)手放したくない財産があるかどうか、
(2)収入状況から考えて分割払いができるか、
(3)免責不許可事由があるか等が、破産手続か民事再生手続かを選ぶかのポイントになります。

住宅ローンの支払を終えていない土地・建物があるのですが、個人再生手続をすると競売にかけられてしまうのではないですか?
 個人再生をする場合には、ある債務は個人再生手続にかけ、ある債務はいままで通りに支払うということは、原則として認められませんが、住宅ローンについては住宅資金特別条項という特則があり、住宅ローン債務の支払いだけを継続して自宅を確保することができるとされています。住宅資金特別条項を利用するためには、個人再生申立人が所有する建物で、自己の居住のために所有していることなどの要件があります。

私はサラリーマンですが、給料が少し多い月もあれば極端に少なくなる月もあります。分割弁済をしていく上で不安なのですが、個人再生の手続を利用することができるでしょうか。
 個人再生には、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があります。
 「小規模個人再生」は、個人債務者で、将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ、負債総額が5000万円以下(担保が付いている債務を除く)である場合が対象となり、分割払いの見込みがあれば誰でも使うことができます。しかし、一方で、債権者が異議を出した場合には、債務の圧縮が認められないことがあります。消費者金融会社などが異議を出してくることはほとんどありませんが、必ず異議を出すという対応をする会社もありますから、注意が必要です。
 「給与所得者等再生」は、小規模個人再生を利用できる者のうち、(1)給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、(2)その収入額の変動幅が小さいと見込まれる者が対象となります。将来の定期的収入や収入額の変動が小さいことが要件となっているため、収入に変動のある事業者や、パート・アルバイトの場合には、この手続を利用することが困難となります。また、給与所得者等再生では、最低でも可処分所得の2年分を弁済しなければならないとされており、最低弁済額要件が加重されています。他方で、給与所得者等再生は、債権者による再生計画案の決議は不要で、債権者は意見を述べることができるに留まるとされています。
 小規模個人再生か給与所得者等再生のどちらが適しているかは、(1)給与などの定期的な収入があるかどうか、(2)異議をだしそうな債権者がいるかどうか、(3)(給与所得者再生を選んだ場合に)最終的に支払をする金額がいくらになるかなどを総合的に判断して、どちらの手続を選ぶかを判断することになります。あなたの具体的な状況によりますので、弁護士に相談した方がよいでしょう。

裁判所に再生手続の申立てをする場合には、弁護士に依頼した方がよいのでしょうか。弁護士費用も気になるのですが。
 再生手続は、可処分所得を算出して再生計画を立て、住宅資金特別条項について検討する必要があるので、手続は簡単ではありません。
 京都では、再生の申立代理人として弁護士を依頼しない場合には、再生委員を選出するために予納金等として30数万円を裁判所に収める必要があります。弁護士に依頼した場合には、予納金等は数万円となりますが、別途弁護士費用が必要です。弁護士費用など詳しくは法律事務所にご相談ください。
 
特定調停と「任意整理」
月々の返済額が多く返済してゆけません。どうすればよいでしょうか。
 決められた月々の返済額を支払うと生活費が足りなくなってやってゆけないが、月の返済額がもうすこし少なくできれば生活費もまかなうことができ、返済を続け完済する目途があると言う場合は、月々の返済額を減額してもらえるように債権者と交渉してみることが必要になります。
 その具体的な方法ですが、@直接債権者と交渉する方法と(これを「任意整理」と呼んでいます)、特定調停を申立て裁判所に話し合いの仲介してもらう方法があります。いずれの場合も、弁護士を付けて交渉することができます。
 分割弁済の月々の返済額を減らしてもらう交渉の場合、3年以内で完済できるようであれば応じる業者が多いようです。弁護士が付いていること、特定調停を申し立てていることは、多少なりとも合意成立にプラスに働くものと考えてよいと思います。いずれにしても、業者が合意してくれなければ話はつきません(一定の結論を強制することはできず、破産や民事再生と異なります)。
 破産や個人再生を利用しないで債務を減額するのは容易ではありませんが、収入や資産がなく、しかし、減額されれば第三者からの援助で支払が可能である等、交渉が可能な場合もありますので、ご相談ください。
 尚、特定調停で合意が成立して調書に記載されると、裁判上の和解が成立したのと同じ効力を有します。
(弁護士 井関 佳法 )

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