京都南法律事務所 憲法を知ろう
憲法を知ろう
都道府県について(92条)

道州制の導入
 自民党・日本国憲法改正草案(2012年)によれば、地方自治体の種類を、「基礎地方自治体とこれを包括する広域地方自治体の2つ」としています。基礎地方自治体とは市町村のことです。広域地方自治体とは都道府県のことではなく、「道州」のことです。都道府県を廃止して、全国を7〜10前後の道と州を新設することになります(京都府の場合は、近畿州の一部となると思われます)。
 自民党は、「憲法を改正しなくても道州制を導入できる」としていますが、現行憲法に定める「地方自治の本旨」から考えて、道州は地方公共団体とは言えないものです。そのことは、最高裁判例が、憲法上の地方公共団体とは、「事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権…等地方自治の基本的権能を附与された地域団体」としていることからも明らかです。道州は、「共同体意識」の基盤とは言えないものだからです。

合区との関係
 議員1人あたりの人口の格差が大きい(憲法14条の平等原則)として、参議院選挙・地方区において、島根県と鳥取県、高知県と徳島県が各合区として、選挙が行われています。結果として、その都道府県の代表が出せない事態となっています(定数1であり、島根県の人が当選すれば、鳥取県の人は誰も国会に行けない)。
 そのことも、道州制導入の1つの理由として挙げられています。
 最高裁の判断が、「議員1人あたりの人口の格差」を最大限重視している中、合区による処理は已むをえないかもしれませんが、私は、もっと、長年にわたる都道府県単位のまとまりを重視してもよいと考えています(人口の格差よりも、都道府県という単位を重視すること)。

都道府県単位について
 現在の47のまとまりは、1890年以降変更はありません。ちなみに市町村数は、15859(1889年)から1724(2020年)と大きく減少しています。
 そのような歴史を踏まえて、県人会組織が各地にできていたり、都道府県対抗の駅伝や高校野球(必ずしも、各都道府県単位で出場しているわけではありませんが)が、盛り上がりを見せているように思います。
 住民にとってなじみがあり、一体感の源である都道府県をなくす道州制の導入は、必要ないものです。
(弁護士 中尾誠・2021年6月記)

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