京都南法律事務所 憲法を知ろう
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お金から見る皇室(88条)

日本国憲法第88条「皇室財産・皇室の費用」
 「すべての皇室財産は、国に帰属する。すべての皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」

皇室財産
 憲法第88条は「皇室の財産は、国に帰属する。」としています。したがって、日本の皇室は私有財産を持たないことになります。海外では、例えばイギリス王室などが土地や建物と言った固有財産を持っていることが有名ですが、日本では認められていません。
 もっとも、後述するように、皇族には「費用」が支出されており、通常の私的経済活動が認められていることから、実際には金銭等の私有財産が存在しているといえます。
 また、皇室経済法7条のいう「由緒ある物」は、皇位とともに、皇嗣が相続することになっています。

皇室の費用
 憲法第88条は「すべての皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない。」としています。
 皇室経済法第3条は、「予算に計上する皇室の費用は、これを内廷費、宮廷費及び皇族費とする。」としています。
 「内廷費」とは皇族の日常の費用その他の内廷諸費(皇族経済法4条1項)であり、一度内廷費として支出されたものは宮内庁の経理に属する公金ではなく御手元金として、皇族の手元に残ります(同条2項)。
 「宮廷費」は、内廷諸費以外の宮廷諸費に充てるものであり、宮内庁が経理することになります(同法5条)。
 最後に「皇族費」は、「皇室の品位保持の資に充てるために、年額より毎年支出するもの及び皇族が初めて独立の生計を営む際に一時金額より支出するもの」とされています(同法6条1項)。この皇族費も支給後は御手元金として公金ではなくなります(同条8項)。しばしば話題になる皇族が身分を離れる際に支給される費用は、この皇族費にあたり、皇室経済会議でその金額を定められます(同条7項)。
 なお、皇室経済会議とは、両院議長及び副議長、内閣総理大臣、財務大臣、宮内庁の長並びに会計検査院の長の合計8人の議員によって構成された会議です(同法8条1項、2項)。

実際の費用
 令和3年度の内廷費は、3億2400万円であり、皇族費は2億6932万円でした。また、宮廷費は118億2816万円でした。ちなみに皇族費の定額は3050万円であり、この金額をもとに各皇族に支給される皇族費が決定されています。
(弁護士 石井達也・2021年10月記)

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