京都南法律事務所 憲法を知ろう
憲法を知ろう
行政の組織(65条)

行政権は内閣に属する(65条)
 憲法の条文の通りの、三権分立の一翼を担う行政権は、内閣に属しています。2021年9月1日に設置されたデジタル庁は、内閣の中の1部門です。また、京都に移転が決まっている文化庁は、内閣の中の省である文部科学省の下にある1部門(外局)です。
 なお、立法権、司法権を含めた国の統治機構全体の概要は、「わが国の統治機構(内閣官房HPより)」を参照ください。
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/files/satei_01_05_3.pdf

内閣の構成と内閣府・デジタル庁
 国の行政機関は、「省」が中心で、省の下に「委員会」や「庁」があるほか、省とは別に省と並んで、内閣府、デジタル庁、復興庁があります(上記の「わが国の統治機構」を参照してください)。
 内閣府は、「内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務とする」とされており、2001年の省庁再編に伴って新設されたもので、「首相が担当することがふさわしい行政事務等を担う機関」として、省より一段高い位置づけをされている機関と言えます。
 デジタル庁も、「デジタル社会の形成に関する行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ること」(デジタル庁設置法3条)を目的として省とは別のもの、省よりも高い位置づけのものとして設置されています。「デジタル社会の形成」が必要であり、そのために、内閣の下の庁として設置することが必要なのかという点については、意見が分かれるところです。
 なお、復興庁は、東日本大震災からの復興を目的として設置された組織で、その必要性については、言うまでもないものです。

省の変遷・再編
 省とは別に、先にふれたようにデジタル庁などの組織を置くかということとは別に、省として、どのような区割りをするかも問題となります。現在、総務省をはじめとして省は、11省ありますが、状況に応じて、再編されるものです(その当否は別にして)。
 ちなみに、厚生労働省は、2001年の省庁再編により、厚生省と労働省が1つになってできたものですし、総務省も、同じ時に、郵政省と自治省が合体したものです。また、防衛省は、それまで内閣府の中に属していた防衛庁が2007年に防衛省に格上げされたものです(それに伴った、防衛庁長官は、防衛大臣となりました)。
 現在、スポーツ庁は文部科学省の外局として設置されていますが、スポーツ省への格上げの声も時々聞きます。その問題はともかくとして、厚生労働省については、元の厚生省と労働省に分離すべきだと思います。健康、医療、福祉、及び介護などの厚生部門と、雇用及び労働などの労働部門とは、その扱う政策も区分でき、いずれもそれ自体が重要な柱だからです。

子ども庁の新設は必要か
 政府は、こども庁を首相直属で内閣府の外局として2023年度中にも設置するとしています(注)
 少子化をはじめとして子供の問題が大切であることは、その通りですが、そのために、わざわざ、新たに組織を作ることが必要かどうかは、別問題です。
 今後の動きに注目することが必要です。
(注)
 内閣官房内のこども政策の推進に係る作業部会の「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針(原案) 〜こどもまんなか社会を目指すこども庁の創設〜 令和3年 12 月2日」
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_seisaku/pdf/kihon_housin.pdf

(弁護士 中尾誠・2021年12月記)

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