京都南法律事務所 憲法を知ろう
憲法を知ろう
統一協会断絶決議は違憲か?(20条1項)

議会決議と信教の自由
 統一協会信者が、富山市議会や大阪市議会の「統一協会や関連団体との関係を断つ」と宣言した決議が、信教の自由を侵害しているとして、決議の取り消しや慰謝料請求の訴えを起こしたと報道されています(2022年12月16日の日経ネットニュース等)。

議会決議の内容
 大阪市議会決議について見てみると、以下のとおりです(なお、アンダーライン及びコメントは、筆者が挿入)。
令和4年 11 月 18 日可決
旧統一教会等の反社会的団体の活動とは一線を画する決議
 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)は、霊感商法やマインドコントロールを利用した高額な商品の売りつけ、多額の献金を強要する活動など違法行為を行い、信者自身の経済的な困窮や社会的な孤立を招くばかりでなく、家族の生活が破壊されるなどの深刻な事態を招いてきた。
 また、国会議員や地方議員に巧みに接近し、一部では選挙戦でのスタッフの提供や、旧統一教会との政策協定の締結などの事例が見られ、旧統一教会と政治家との関係性について国民的な関心事となっている。政治家各々が説明責任を果たしていくことはもちろんであるが、何より喫緊の課題として、被害の重大性に鑑み、被害者を迅速に救済すること、また被害の防止策が強く求められているとともに、実効性のある法律の整備を進める必要がある。
 大阪市においては、阿倍野区にあった元大阪市の施設が、旧統一教会の信者が経営する企業に買い取られた後、旧統一教会に売却され、現在の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の施設となっている。この施設が大阪市内における一大拠点となり活動されていることに対して、その当時、知らなかったとはいえ旧統一教会の関係者への売却を判断した議会においても忸怩たる思いである。
 よって本市会は、旧統一教会等の反社会的団体の活動に取り込まれることがないよう一線を画することを強く決意する。
 以上、決議する。
(コメント)
いくつもの判例が統一協会の組織的違法行為を認定しています

統一協会による信者と家族の深刻な被害が明らかになっています

統一協会と政治家との深刻な癒着関係が明らかになっています

政治の責任と課題について言及しています

大阪市独自の問題に触れています

大阪市会が反社会的団体の活動に取り込まれないよう一線を画すると述べています

信仰の自由を侵害するものではない
 決議は、信者の信仰を制限するものではなく、信者の信教の自由を侵害するとは言えません。
また、決議は、「旧統一協会等の反社会的団体の活動に取り込まれることがないよう一線を画する」と述べていますが、これはこれまでの確定判決が認定するように、統一協会が霊感商法やマインドコントロール下で高額寄付を強要するなどの違法行為を繰り返し、深刻な被害を生じさせてきたことを理由に、こうした反社会的団体と関係しないという当然のことを述べたもので、信教の自由を侵害するものではありません。
 統一協会は、既に、統一協会問題を扱った放送局や識者を訴えっており、今回の提訴も統一協会批判のけん制を狙ったものと考えられます。統一協会による被害根絶、政治との癒着の真相解明と関係解消のため、監視と批判を緩めないことが必要です。

(弁護士 井関 佳法・2022年12月記)

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