京都南法律事務所 法律相談Q&A

「新型コロナウイルス感染症」と法律
 
新型インフルエンザ等対策特別措置法
 この法律は、元々、新型インフルエンザの大流行(パンデミック)を想定して作られていた法律でしたが、急遽「、新型コロナウイルス感染症について、新型インフルエンザ等とみなして、この法律及びこの法律に基づく命令の規定を適用する」としました。インフルエンザではなく、コロナウイルスが大流行することは、ウイルスの専門家にとっても、想定外のことだったようです。
 政府対策本部長(安倍元首相)が発した緊急事態宣言は、この法律(32条)によるもので、実際の自粛要請や施設の使用制限の要請など「感染を防止するための協力要請」は、指定された都道県知事によって行われました(同法45条)。
 緊急事態宣言を出す権限は、国にしかありませんので、都道府県独自の「緊急事態宣言」は、この法律に根拠を持たないものです。また、現時点(9月30日)においては、この法律による緊急事態宣言は解除されていますので、国が出している「イベントの規制緩和の通知」(11月末までの催物制限等について・事務連絡令和2年9月11日)など一連のものは、この法律に基づかないものです。
 ロックダウン(外出禁止などの措置を強制力を持って行う)による規制をしている国も多くありますが、我が国の場合は、「要請」の形での規制となっているのが大きな特徴です。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
 この法律は、対象となる感染症について、エボラ出血熱、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ・・・という形で、列挙し特定しています(同法6条)。新型コロナウイルス感染症については、当然、挙げられていませんでしたので、今回の事態の中、政令で「指定感染症」として指定されました
 感染症の予防や患者に対する医療に関して、中心的に「必要な措置」をするのは、都道府県、及び、「保健所を設置する市又は特別区」(同法64条)であり、保健所がその最前線の機関となります。
 感染症が疑われる患者からの検体の採取・検査は、行政検査として、この法律に基づいて行われています(同法15条)。PCR検査を保健所が主導して行われているのは、このことに拠るものです。なお、全国の保健所数は、852(1991年)から469(2020年)と大きく減少しています。「合理化」のつけがきているようです。

出入国管理及び難民認定法
 現在、ほとんどの外国人の入国を規制しています。これは、出入国管理及び難民認定法5条の「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者(外国人)」は、「本邦に上陸することができない」との規定に基づいています。他の国も同様に規定をおいて、「外国人」の入国を規制していますが、これは、自国民の安全・健康は、まず、その国が守るという考えに基づいているものです。
2020年11月(弁護士 中尾 誠)

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