京都南法律事務所 法律相談Q&A

自転車事故における責任

先日、家の近くで自転車とぶつかりました。病院で診断を受けたところ、骨折していました。自転車を運転していた人に治療費などを払ってもらうことはできるのでしょうか?

自転車の運転手に対して、治療費などの支払いを求めることができます。

(1)自転車事故の性質
 自転車は、道路交通法上「車両」の一種とされており、自動車と同じく交通ルールを守って、人や財産に損害を与えないようにしなければなりません。
 そのような義務に違反して、人や財産に損害を与えた場合には、刑事上の責任を問われることもありますし、被害者に生じた損害を賠償する民事上の義務も負います。
 民事上の責任の根拠は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償ということになります。

(2)損害賠償の対象
 自転車事故における損害賠償の対象は、基本的に自動車事故と同じです。
 大きく分けると、治療費や通院交通費などの積極損害と休業損害や逸失利益などの消極損害に分けられます。
 特に、自己の被害者が重度の後遺障害を負った場合や死亡してしまった場合には、逸失利益が非常に高額になるケースがあります。
 例えば、小学生が無灯火で自転車を運転中に事故を起こし、被害者の62歳の女性に後遺障害を負わせた事案では9521万円の賠償額が認められました(神戸地裁平成25年7月4日)。他にも、数千万円を超える賠償額が認められた判決が複数あります。

(3)自転車保険について
 以前は自転車事故では、加害者に十分な資力がない場合に、被害者が十分な被害弁償を受けられないケースがありました。
 自動車の場合、自賠責保険への加入が義務付けられており、任意保険への加入を行っている場合も多いことから、保険会社から被害を弁償してもらうことができますが、自転車の場合には自賠責保険への加入が義務付けられていなかったことが原因の一つです。
 最近では、自転車事故の裁判所で数千万円を超える損害賠償が認められたことなどから、自転車事故による損害賠償への関心が高まっています。
 都道府県によっては、自転車についても、損害賠償保険に加入することを条例で義務付けているところもあります。
 近畿では、京都府・大阪府・滋賀県・奈良県・兵庫県で保険への加入が義務付けられています(和歌山県は努力義務)。
(弁護士 石井 達也)

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