コラム 中尾 誠 
もう少しだった初めの一歩
 かつて、男子100m走で、10秒の壁を長い間切ることは出来なかった。しかし、1983年にカール・ルイスが初めて10秒を切ると、他の人も次々とそれに続いた。「はじめの一歩」は、大変な一歩であるが、後に続く者を勇気づける一歩でもある。
 先日(10月15日)、囲碁の新人王戦(しんぶん赤旗主催)の決勝3番勝負の第3局が行われた。上野愛咲美4段は、これに勝てば女性初の新人王になるという対局であったが、惜しくも負けてしまった。なお、新人王戦は、政党主催の棋戦(将棋もある)であるが、れっきとした公式戦であり、若手の登竜門と言われている。
 残念ながら、「はじめの一歩」とはならなかった。
 「もう少し」と言えば、将棋の世界でも、昨年、同じようなことがあった。プロになるには、原則として、奨励会の三段リーグにおいて1位ないし2位になることが必要であり、年齢制限もあるという厳しいものである。西山朋佳3段(当時)は、2020年3月に行われたリーグの最終2局に連勝したものの、惜しくも次点(順位の差での頭はね)となり、昇段(プロ入り)を逃した。女性初のプロ棋士としての「はじめの一歩」を歩むことは出来なかった。
 私自身、何かの「はじめの一歩」に挑戦することはないが、自分の周りに「挑戦する人」がいれば、応援できればと思っている。
 
2021年10月26日